感覚過敏・感覚過鈍とは何か?わかりやすく解説!

感覚過敏(hypersensitivity)および感覚過鈍(hyposensitivity)は、脳が外部の感覚刺激を過剰または過小に処理する状態を指します。これは、自閉スペクトラム症(ASD)発達障害、感覚処理障害(SPD)の一部として広く見られる症状で、個々の感覚の違いが日常生活に影響を与えることがよくあります。

感覚過敏は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった感覚刺激に対して、非常に敏感に反応する状態です。通常であれば「心地よい」と感じる刺激が、感覚過敏の人にとっては「痛み」や「不快感」として受け取られることがあります。感覚過敏は、日常生活に大きな影響を及ぼし、外出や人混み、社交的な状況が困難になることがあります。今回は主に視覚と聴覚にテーマを当てていきます。


視覚過敏と視覚鈍麻

視覚過敏の特徴

視覚過敏は、目が光や視覚的な刺激に対して非常に敏感になる状態です。日常的な環境の光が過度に強く感じられたり、色のコントラストや視覚的な動きが過剰に意識されることがあります。これにより、次のような問題が生じます。

強い光が眩しく感じる: 日光や蛍光灯などの明るい光が過剰に刺激となり、痛みや不快感を引き起こします。
・ちらつきや動きに敏感: 画面のちらつきや視野内の動きが、集中力を奪ったり、頭痛や疲労感を引き起こします。
・色やコントラストの過剰感知: 明るい色や色の組み合わせが強く感じられ、視覚的な疲れや混乱を引き起こすことがあります。

視覚鈍麻の特徴

視覚鈍麻は、視覚的な刺激に対する反応が鈍い状態を指し、周囲の視覚情報に気づきにくくなることがあります。視覚的な変化や物理的な環境の変化に対して、反応が遅れたり、必要な情報を見落とすことがよくあります。

光や動きに対する反応の遅れ: 明るさや動きに気づくのが遅く、周囲の変化に素早く適応できないことがあります。
・視覚的な混乱: 複雑な視覚的情報に対して、適切に処理できず、混乱を感じやすくなります。
・物体の識別が遅れる: 特に暗い場所や微妙な色の違いに対して、物を識別するのに時間がかかる場合があります。


聴覚過敏と聴覚鈍麻

聴覚過敏の特徴

聴覚過敏は、音に対する感覚が極めて鋭敏になる状態です。日常の音が非常に大きく、または不快に感じることが多く、騒音に対して強いストレスを感じることがあります。

小さな音が大きく感じる: 日常的な会話の声や周囲の物音が過剰に響き、耳鳴りや頭痛を引き起こすことがあります。
・特定の音に対して強く反応する: 高音や金属音、シャープな音に対して特に敏感で、耳をふさいだり、その音から逃れようとする行動を取ることが多いです。
・音の多い環境に耐えられない: レストラン、パーティー、ショッピングモールなど、雑音の多い環境では集中ができなくなり、強い不安感を感じることがあります。

聴覚鈍麻の特徴

聴覚鈍麻は、音に対する感覚が鈍く、周囲の音に気づかないことや、音に対する反応が遅れることが特徴です。この状態では、重要な音や指示を聞き逃すことが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。

音に対する反応が遅れる: 呼びかけやアラーム音などに気づかず、反応が遅れることがあります。
・音を聞き取るのが難しい: 特に雑音が多い環境では、特定の音や声を聞き分けるのが難しく、他者とのコミュニケーションに問題が生じることがあります。
・強い音への鈍感さ: 非常に大きな音や高音に対して、ほとんど反応を示さないことがあり、危険な状況に気づかないことがあります。


触覚・味覚・嗅覚の感覚過敏と感覚鈍麻

触覚・味覚・嗅覚の感覚過敏

触覚過敏: 衣服の素材や肌に触れるものに対して強い不快感を感じ、特定の素材や布が「痛い」と感じることもある。
・味覚・嗅覚過敏: 特定の食べ物や匂いに対して過敏に反応し、日常的な食事が難しくなることがある。

触覚・味覚・嗅覚の特徴

触覚過鈍: 痛みや温度変化に対して鈍感になり、ケガをしても気づかないことがある。
味覚・嗅覚過鈍: 味や匂いに対して鈍感で、腐敗した食べ物や異常な味にも気づきにくい。

日常生活における影響

感覚過敏・鈍麻は、日常生活においてさまざまな場面で影響を与えます。職場や学校、公共の場では、適切な対策を講じないと大きなストレスや困難を引き起こす可能性があります。

視覚過敏・鈍麻による影響

  • 職場環境: 明るい照明やコンピュータの画面が原因で、視覚過敏の人は頭痛や眼精疲労を感じやすくなります。対策として、光を調整できるデスクライトや、画面のブルーライトカットフィルターを使用することで、視覚的な負担を軽減できます。
  • 交通機関: 視覚過敏がある人にとって、車両の照明や交通標識の明るさが非常に刺激的で、疲労感やストレスを引き起こします。反対に、視覚鈍麻の人は、信号や標識の変化に気づきにくく、交通安全上のリスクが高まることがあります。
  • 教育環境: 学校や大学で視覚過敏を持つ生徒は、教室の照明や視覚的な刺激に反応しやすく、集中力が低下します。視覚鈍麻の場合は、黒板やスクリーン上の情報を認識するのが遅く、授業の内容を理解するのに時間がかかることがあります。

聴覚過敏・鈍麻による影響

  • 公共の場での不快感: 騒がしい場所や音楽のかかっているカフェなどは、聴覚過敏の人にとって非常にストレスフルです。イヤーマフや耳栓を使用して音の刺激を軽減することが効果的です。
  • 家庭生活: 家庭内でも、家電の音や家族の会話音が過剰に響き、リラックスできないことがあります。聴覚過敏の場合、静かな時間や場所を確保することが非常に重要です。一方で、聴覚鈍麻の人は、アラームや呼びかけに気づかないため、重要な場面での反応が遅れることがあります。

感覚過敏・感覚鈍麻への対策とサポート

感覚過敏や感覚鈍麻は、適切な対策を講じることで、日常生活の中での困難を軽減することができます。視覚や聴覚の感覚特性に対する対応策を、生活環境に合わせて実践することが重要です。

視覚過敏・鈍麻に対する対策

  • 視覚的な情報整理: 視覚過敏の人が視覚的な情報に圧倒されることを防ぐため、シンプルで整理された空間が有効です。例えば、部屋の中の物を整理し、明確な色使いを心がけることで、視覚的ノイズを減らすことができます。また、学校や職場では、ホワイトボードやスクリーン上の情報を整理し、重要な情報がすぐに目に入るように配置することが役立ちます。
  • 明暗の調整: 視覚過敏に対応するために、照明の調整が重要です。デスクライトや間接照明を活用して、明るさを調整することが推奨されます。特に、青色光を抑えるためのフィルターや照明器具は、視覚的な疲れを軽減し、作業効率を向上させるのに役立ちます。一方で、視覚鈍麻の人は、環境を明るくすることで視覚情報を強調し、認識力をサポートすることが効果的です。

聴覚過敏・鈍麻に対する対策

  • 音のコントロール: 聴覚過敏の人にとって、過剰な音を抑えることは非常に重要です。イヤーマフや耳栓を使用することで、音の刺激を減らし、騒がしい環境でも集中力を維持しやすくなります。特に、公共の場所や職場では、静かな作業スペースの提供が有効です。
  • 音源の特定と管理: 聴覚過敏の人にとって、特定の音が不快感を引き起こすことがあるため、音源を特定し、その音を制御することが重要です。例えば、職場の電話の音やキーボードの打鍵音を静かにするために、消音パッドやイヤホンを活用することが推奨されます。一方で、聴覚鈍麻の人には、音を増幅する補聴器やスピーカーを活用して、重要な音や情報を聞き逃さないようにする対策が必要です。
  • 音環境の調整: 自宅や職場では、聴覚過敏の人がリラックスできる静かな環境を作り出すことが重要です。例えば、音の反響を抑えるためにカーペットやカーテンを使ったり、部屋の構造を工夫して騒音が入りにくくすることが効果的です。逆に聴覚鈍麻の人には、周囲の音が聞き取りやすいように、音の響きを強調する環境作りが必要です。

視覚・聴覚過敏と鈍麻の影響と生活への配慮

感覚過敏や鈍麻が日常生活に与える影響は非常に大きいです。視覚や聴覚の感覚過敏・鈍麻を持つ人々は、それぞれの感覚特性に応じた環境や対応策を取ることで、生活の質を大きく向上させることができます。

視覚過敏の生活面での配慮

視覚過敏の人にとっては、明るい光や強い色のコントラストが不快感を引き起こすため、生活空間を視覚的に快適に整えることが重要です。特に、次のような点に配慮すると、日常生活がよりスムーズになります。

  • 居住空間の調整: 部屋の明かりを調整するために、間接照明や明るさを調節できるランプを使用することが推奨されます。また、壁の色や家具の配置もシンプルに保ち、視覚的に圧迫感を減らす工夫が有効です。
  • 屋外活動の工夫: 視覚過敏の人は、日中の外出時に日光が眩しく感じることが多いため、サングラスや帽子を使用して光の強さを軽減することが効果的です。特に、紫外線対策も兼ねた偏光レンズのサングラスは、外光の反射を抑え、視覚的な快適さを提供します。

聴覚過敏の生活面での配慮

聴覚過敏の人は、音が多い環境に長時間いることが困難です。生活の中での音環境を整え、聴覚に過度な負担をかけないようにするための工夫が重要です。

  • 静かな作業空間の確保: 自宅や職場で静かな作業スペースを確保することが聴覚過敏に対する有効な対策です。騒がしい音が気になる場合、イヤーマフや、耳栓を使用して音を遮断し、集中力を高める環境を作ります。
  • 音のリズムや周波数を調整: 特定の音の周波数が苦手な場合、その周波数を避けるような音源や、心地よい音楽を使用してリラックスできる音環境を作ることが重要です。例えば、自然の音(小川のせせらぎや風の音など)を使用することで、聴覚的なストレスを軽減できます。


まとめ

感覚過敏・感覚鈍麻は、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあり、それぞれに応じた対応策が必要です。視覚過敏の人は光や色の刺激に対して敏感に反応し、聴覚過敏の人は音に対して過剰に反応します。一方、視覚や聴覚の感覚鈍麻の人は、周囲の変化に気づくのが遅く、重要な音や視覚的なサインを見逃すことが多くなります。

日常生活の中で、これらの感覚特性に対する配慮を行い、適切なツールやサポートを活用することで、感覚過敏や感覚鈍麻の人々が快適に生活できる環境を整えることができます。

大人(18歳以上)の検査/料金

臨床心理士・公認心理師による専門的な心理検査で、仕事や学業の問題、知的能力の測定、得意・不得意の把握、発達障害傾向のチェック、対人関係等の問題の把握、思考や性…

大人(18歳以上)の検査メニューはこちらから
子どもの検査/料金

臨床心理士・公認心理師による専門的な子ども向けの心理検査です。学業の問題や知的能力の測定、発達障害や特性、学習障害のチェック、性格傾向の検査を行っています。 対…

子ども(小学生~高校生)の検査メニューはこちらから