成人になってからの発達障害の発見とその後のサポート

2024年9月3日 2024年9月3日

管理者日本心理検査センタ

発達障害は多くの場合、子どもの頃に発見されますが、成人になってから診断されるケースも増えています。成人期の発達障害は、職場や家庭での役割が増える中で、適応の困難さが浮き彫りになり、これが診断のきっかけとなることが多いようです。本稿では、成人における発達障害の発見、診断プロセス、その後の支援について詳しく解説します。

成人における発達障害の発見とその後のサポート

ライフステージの変化がきっかけ

発達障害は、幼少期に特徴的な症状が現れることが多いですが、成人になってからの環境変化や役割の増加が発見のきっかけとなることがあります。例えば、学生時代はさほど問題にならなかった不注意や多動が、就職や結婚・出産などで責任が増えることで顕著になり、仕事の非効率さや対人関係のトラブルとして現れるケースです。こうした変化が自分自身に疑問を持つきっかけとなり、専門医の診断を受けることに繋がることはよく見られます。

自己理解と社会的な理解の向上

メンタルヘルスへの関心が高まる中で、心理カウンセリングや精神科を受診する人が増えています。その過程で発達障害の可能性が示唆され、初めて自分の特性に気づくことがあります。特に、職場でのパフォーマンスが期待に達しない、または社会的なプレッシャーに対処しきれない場合に、発達障害が疑われることがあります。こうした背景から、成人期に発達障害が発見されるケースが増えています。

成人期の発達障害の特徴

ADHDの特徴とその影響

ADHDは、不注意、多動性、衝動性の3つの主な症状で特徴づけられます。成人期になると、これらの症状は主に不注意と衝動性として現れます。例えば、約束の時間を守れない、仕事を計画通りに進められない、物事を後回しにするなどの問題が日常生活に支障をきたすことがあります。また、対人関係においても衝動的な発言や行動が誤解を招くことが多くなります。

ASD（自閉スペクトラム症）の特徴とその影響

ASDは、社会的なコミュニケーションの難しさ、特定の興味への固執、そして繰り返し行動などが特徴です。成人期のASDでは、職場や家庭でのコミュニケーションの難しさが特に問題となります。例えば、暗黙のルールを理解できず、職場で孤立してしまうことや、家庭内での役割が不明確な場合にストレスを感じることがあります。また、特定の興味に対して過剰に集中することで、他の重要な生活面が疎かになることもあります。

発達障害の診断とそのプロセス

診断のステップ

成人期の発達障害の診断は、以下のプロセスを経て行われます。

初期相談と聞き取り: ご自身または家族等が発達障害を疑い、専門医に相談します。この段階で、幼少期から現在までの行動や生活の困難さについて詳しく聞き取りが行われます。
心理検査: 必要に応じて、知能や注意力、記憶力を評価する心理検査が実施されます。WAIS-IV（ウェクスラー成人知能検査）などが代表的な検査です。これにより認知機能のプロフィールが明らかになり、発達障害の特徴が見えてきます。
診断: 心理検査の結果、聞き取りの内容を総合的に判断し、発達障害の診断が下されます。診断が確定すると、本人の特性に応じた支援が計画されます。
支援計画の策定: 診断後、生活の質を向上させるための支援計画が立てられます。必要に応じて、職場での配慮や家庭でのサポート、心理カウンセリングなどが提案されます。

診断後のサポートと対応策

自己理解と自己管理

発達障害の診断を受けた後、最も重要なのは自己理解を深めることです。診断は自分の特性を理解するための出発点であり、これを受け入れることで日常生活をより良く管理できるようになります。例えば、ADHDの傾向がある場合、時間管理の方法を工夫することや、メモやアラームを活用することで日常の混乱を減らすことができます。

職場での配慮と適応

発達障害を持つ成人が職場で適切に働くためには、環境の調整が重要です。職場での配慮には、以下のような具体的な方法があります。

タスク管理の支援: 複数のタスクを同時に処理するのが難しい場合、優先順位を明確にし、ステップごとに取り組む方法を導入します。
コミュニケーションの改善: 明確で具体的な指示を提供することで、誤解を減らし、期待に応えることができます。職場のルールや手順を視覚的に示すことも有効です。
環境の調整: 集中しやすい環境を整えるために、静かな作業スペースや、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用を促すことが考えられます。

カウンセリング／心理療法

発達障害に伴う精神的な負担を軽減するために、カウンセリングや心理療法が重要です。認知行動療法（CBT）は、発達障害に関連する思考や行動パターンを見直すために有効です。例えば、ADHDの人が時間管理やタスク完了に困難を感じる場合、CBTを通じて新しい習慣や考え方を身につけることができます。

家族やパートナーの理解と支援

発達障害の診断を受けた本人がより良い生活を送るためには、家族やパートナーの理解と支援が不可欠です。家族が発達障害についての正しい知識を持ち、共に問題を解決しようとする姿勢が重要です。また、家族カウンセリングや支援グループへの参加も、相互理解を深める手助けとなります。

社会的サポートの活用

地域の支援グループやオンラインコミュニティも、成人期の発達障害者にとって重要なリソースです。これらのグループでは、同じような課題を抱える人々との交流や情報交換が可能であり、孤立感を減らすだけでなく、実践的なアドバイスを得ることができます。また、発達障害者支援センターなどの公的機関も、就労支援や生活支援を提供している場合があります。

成人期における発達障害の理解を深めるために

成人期において発達障害が発見されることは、その後の生活を見直す重要な機会となります。発達障害は個人の特徴であり、適切な理解とサポートがあれば、その人が持つポテンシャルを最大限に引き出すことができます。社会全体の理解が進むことで、発達障害を持つ人々が自分らしく生きるための環境が整っていくことが期待されます。