WAIS-IV(ウェイス・フォー)とは?わかりやすく解説

WAIS-IV(ウェイス・フォー)とは?

ウェクスラー成人知能検査(WAIS-IV:ウェイス・フォー)は、世界的に最もよく使用されている心理検査の一つです。その略称となっているWAIS(ウェイス)は、ウェクスラー成人知能検査の英語名「Wechsler Adult Intelligence Scale」の頭文字から取られています。このテストは、同世代の集団における知的水準を測定するための「IQテスト」として広く知られており、2024年4月現在、日本の最新バージョンは第4版となっています。

そもそも心理検査ってなんでするの?どんな種類がある?

心理検査は、知能や発達の水準、パーソナリティ(人格)のあり方などを客観的に評価するためのツールです。病院や学校、施設などで現在の状況を評価し、今後の支援に活かすために実施されます。

心理検査にはいくつかの分類があります。

1. 知能検査・発達検査

知能検査や発達検査は対象者の知能や発達の水準を測定するものです。代表的なものには以下があります。

  • WISC-IV (ウェクスラー式知能検査): 児童向けの知能検査で、5歳から16歳11カ月までの対象者を対象としています。
  • WAIS-IV (ウェクスラー式知能検査成人版): 成人向けの知能検査で、16歳から90歳11ヶ月までの対象者を対象としています。
  • 田中ビネーV: ビネー式の知能検査で、年齢に分けられた問題群を実施する点がウェクスラー式との大きな違いです。
  • 遠城寺式乳幼児分析的発達検査: 乳幼児の発達を把握するための検査で、運動、社会性、言語の3分野で診断します。
  • 新版K式発達検査: 0歳から成人までの発達の水準を測定する検査で、姿勢・運動、認知・適応、言語・社会の3領域で評価します。
  • Vineland-II 適応行動尺度: 0歳から92歳までの幅広い年齢帯に対して、適応行動の水準を数値化できる検査です。

知能検査は、自己理解や問題解決に役立つ情報を提供する貴重なツールです。知能検査や発達検査は、以下の目的などで使用されます。

  • 知的障害の診断:知的障害の程度を評価するために行われます。
  • 特性の理解:個人の特性や能力の偏りを知るために活用されます。
  • 発達障害の診断:発達障害の疑いがある場合、知能検査を通じて特性を評価します。

2. 人格検査

人格検査は対象者のパーソナリティや性格、心理的特性などを測定するための検査です。主な種類には以下があります。

  • 質問紙法: アンケートのような用紙で「はい・いいえ」などを記入してもらう検査です。
  • 投影法: 一定の刺激に対する無意識的な反応を見る検査です。
  • 作業法: 一定の決められた作業を行う検査です。

具体的な検査には、Y-G性格検査、SDS(うつ性自己評価尺度)、ロールシャッハテスト、バウムテスト、TATなどがあります。

心理検査は、テストバッテリーとして複数の検査を組み合わせて実施され、より多角的かつ立体的な対象像を見いだすことができます。

WAISについて詳しく

WAIS-IVは、10~15種類の下位検査から構成されており、これらの結果から全検査IQと認知領域別の4つの知能指数(指標得点と呼ばれています)を算出します。WAIS-Ⅳは、知能指数を知りたい方や自己理解を深めたい方、発達障害の傾向を調べたい方など、さまざまな目的で受検されます。

WAIS-IVは、1955年にDavid Wechslerによって初版(Form I)が発表されました。この初版は、1939年にリリースされたWechsler–Bellevue Intelligence Scaleの改訂版として作成されました。Wechslerは、患者を詳しく知るためにWAISを創設し、知能を「…人が目的を持って行動し、合理的に考え、環境と効果的に対処するための総合的な能力」と定義しました。彼は知能を特定の要素に分解し、それらを個別に測定できると考えていました。この理論は、一般的な知能は特定の相互関連する機能や要素で構成されているというものでした。

WAISは、当時、知能テストの権威とされていたBinetのスケールとは異なるアプローチを取りました。WechslerはBinetスケールの成人向けの適用性に疑問を持ち、特に速度を重視する点に批判を寄せました。WAISは、成人の知能を適切に評価するために新しいアプローチを提供し、知能検査の分野に革命をもたらしました。

WAIS-IVは、以下のような目的で受検される方々に適しています。

  • 自分の知的能力(IQ)を知りたい
  • 知的に問題がないか知りたい
  • なにが得意・不得意か知りたい
  • 発達障害の傾向を調べたい
  • 就職(転職)活動中に活かすため自己理解を深めたい
  • 仕事や人間関係がうまくいかない原因を探したい
  • 会員制高知能団体のMENSAへ入会したい

MENSAについて補足

MENSAの検査は元々MENSAが実施している検査によって入会可否を決めていたようです。しかし、コロナ過で検査の実施が難しくなり、他機関でのWAIS-Ⅳによる検査結果を本来の検査の代用とすることを認められています(2024年4月時点の情報です)。今後はこうした代用検査は認められなくなる可能性もあります。

ちなみに、当センタではMENSA受検のためにWAIS-Ⅳを受けられる方も多く、これまでに多くの方から「MENSAに入会できました」とご報告をいただいています。

検査方法と内容

WAIS-IVは、臨床心理士や公認心理師などの検査者と受検者のマンツーマンで行われます。緊張感のない雰囲気で実施され、所要時間は検査実施数や個人差によってかなり異なりますが、おおよそ1時間30分~2時間30分です。10種類もしくは15種類の下位検査を行い、全検査IQや認知領域別の指標を評価します。

WAIS-IVの結果から、受検者の特性を正しく理解するためには、各指標の数値だけでなく、普段の性格や検査時の様子、各指標のバランスなどを総合的に分析する必要があります。カウンセラーが様々な要素を考慮し、適切な対処法を提案します。

WAIS-IVは、知的能力を客観的に評価する貴重なツールであり、自己理解や問題解決に役立つ情報を提供します。

外国人の方の受検について

ウェクスラー成人知能検査(WAIS-IV)は、世界的に広く使用されている成人向けの知能検査です。では、外国人の方はこの検査を受けることができるのでしょうか?

結論から言うと、WAIS-IVは、外国人の方でも受検することができます。ただし、以下の点に注意する必要があります。

言語の理解:WAIS-IV(日本語版)は日本語で実施されるため、受検者は日本語を理解できる必要があります。外国人の場合、日本語の理解度によって受検の適応が異なります。

文化的背景:知能検査は文化的背景に影響されることがあります。外国人の場合、文化的違いを考慮しながら検査を実施する必要があります。

専門家の判断:外国人の受検にあたっては、臨床心理士や専門家の判断が重要です。受検者の言語能力や文化的背景を考慮し、適切なアプローチを選択します。

ただ、やはり母国語版によるWAIS検査を受けた方が間違いはないでしょう。これは日本人の方が他の国でWAISを受ける場合も同様です。

知能検査を受ける場所

知能検査は、基本的に病院や支援機関、施設のカウンセリングルーム等で受けることができます。発達障害の診断を受けたい場合は病院へ相談してみると良いでしょう。

当センタでもWAIS-Ⅳを始め、様々な心理検査を行っています。新宿店では同ビルの別階に提携精神科クリニックがありますので、診断が必要な方はそちらを先に受診して相談するとスムースです。