ADHD(注意欠如・多動症)とは?わかりやすく解説

ADHDとは?

ADHDとはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略語で、注意欠如・多動症と訳されます。発達障害の一つで、不注意と多動・衝動性を主な特徴としています。発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態を指します。

ADHDは、主に下記の3つの症状があるとされています。

不注意

注意を持続させることが難しい症状です。作業の途中で他の物事に気がそれてしまったり、集中が切れてしまったりして、作業の継続が難しいことがあります。

多動性

落ち着きがなく、座っていることが難しかったり、じっとしていても気持ちがそわそわしたりします。手足を動かしたり、動き回ったりすることが多いです。

衝動性

思ったことをすぐ口に出してしまったり、思いついたことをすぐに実行してしまうことがあります。

ADHDの経過・診断

ADHDの症状は12歳より前に始まり、一部の子どもでは3歳の時点で認識できることもあります。症状は軽度から重度までさまざまで、子どもから成人に至るまで継続的に影響を及ぼす慢性的な状態です。

下記のような症状で家族や教師などの周りの方が気づいたり、ご本人の困り感が強いことから精神科受診に至り、診断に至ることが多いようです。

  • 不注意
    • 学業や仕事などで細部に注意を払わないことが多い
    • 遊びや仕事などの活動で注意を維持するのが難しい
    • 直接話しかけられても聞いていないことが多い
    • 指示に従わず、課題を完成させない
    • 活動の計画を立てることが難しい
    • 長時間の精神的な努力を必要とする課題を避ける
    • 必要な物を失くすことが多い。
  • 多動・衝動性
    • 手や足をくねくねさせたり、座席でふらついたりすることが多い
    • 座っているべき場所から立ち上がることが多い

ADHDがある方の割合は、統計調査によってかなり差はありますが、DSM-5では子どもで約5%、成人で約2.5%とされています。性別では女性より男性の方が多いようです。

また、ADHDの子どもや大人は、うつ病、双極性障害、不安症などの精神疾患を伴うことがあります。

ADHDは遺伝性があり、血縁の方にADHDがあれば遺伝しやすくなるという家族因性が指摘されています。しかし、近年は愛着障害と関係する子供の養育環境の問題に着目する研究もあり、ADHDには遺伝要因と環境要因の双方が影響しているという見方もあります。

ADHDは重症度や生活支障度の個人差が非常に大きいため、ADHDであるから必ず治療・療育を受けないと日常生活・仕事にまったく適応できないとは限りません。ADHDを持っている人やADHDと診断されずに大人になった人は、日本国内で数百万人単位でいると推測されています。

ADHDの診断には、精神科で専門医の診察を受けることが必要です。診察では、ご本人や親御さんへの問診に加え、心理検査や脳画像検査などが用いられます。また、似たような症状を起こす他の病気を否定する必要があります。

ADHDの治療

ADHDの治療法には下記のようなものがあります。

薬物療法

ADHDの治療の中心は薬物療法です。脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン等)の働きを改善し、症状を軽減することができます。2024年4月現在、日本では下記の薬剤が保険適応となっています。

  • メチルフェニデート(コンサータ)
  • アトモキセチン(ストラテラ)
  • グアンファシン(インチュニブ)
  • リスデキサンフェタミン(ビバンセ)

ADHDの薬にはいくつかの副作用があります。以下に一般的な副作用をいくつか紹介します。

  • 睡眠障害: 薬物の刺激作用により、眠りにくさや不眠症が起こることがあります。
  • 食欲の変化: 食欲が増加または減少することがあります。
  • チック症状: 一部の薬物は、チック症状を引き起こす可能性があります。
  • 気分変動: 薬物の影響で気分が変動することがあります。
  • 吐き気: 薬物の副作用として吐き気が現れることがあります。
  • 頭痛: 薬物による頭痛が報告されることがあります。

これらの副作用は個人によって異なり、薬物の種類や用量によっても変わります。副作用が気になる場合は、必ず医師に相談するようにしましょう。

認知行動療法

ADHDの症状を管理するために行動を変えることを目指すアプローチです。日常生活や人間関係の改善に役立ちます。

例えば、時間管理、タスクの整理、集中力の向上などを学ぶことができます。精神科クリニックやカウンセリングルーム等でこれらのカウンセリングを受けることができます。

その他

上記以外にも、下記のような改善方法があります。

  • 食事の改善:脳と腸の機能を向上させ、症状を軽減します。
  • 運動:脳の機能を改善し、症状を軽減します。
  • マインドフルネス瞑想:注意を集中させ、ストレスを軽減します。
  • 環境調整:学校や職場などの環境を調整することで、ADHDの症状を軽減できます。
    例えば、静かな場所で作業する、タスクを分割する、リマインダーやアラームを使うなどが有効です。
  • 家庭や学校、職場で問題となりそうな状況にならないよう、環境を調整したり、問題が起きた時の解決方法を考えます。たとえば、気が散らないような静かな場所に移動してもらったり、周りにわかりやすい指示をお願いする、こまめに休憩を挟むなどの工夫等があります。

ADHDは個人によって異なりますが、専門家の適切な治療とサポートが重要となります。

ご自身の発達傾向や特徴を知りたい方は心理検査を受けてみるのも一つの方法です。

診断や治療は希望していないが、発達障害ではないか悩んでいる方、仕事や学業、対人関係につまづいて自身の傾向を知りたい方、既にADHDの診断を受けているが、ご自身の得意・不得意、特徴を知りたい方は当センタの心理検査をご利用いただければと思います。

診断希望の方は精神科クリニックを受診しましょう。